出光興産【溝口】

「両社は企業風土があわない」と出光興産と昭和シェル石油の合併に反対している出光創業家は合併阻止へ向け強硬策をとったそうです。出光経営陣が進めるロイヤルダッチシェルからの昭和シェル株式買取り(33.3%)を阻止するため、対抗手段として昭和シェル株式を創業家が0.1%取得したそうです。

はい、分かりにくいですね。まず金融商品取引法により「取得株数が1/3を超える場合には市場にて公開買い付け(TOB)しなければならない」とあります。そして経営陣と創業家は一体とみなされるため、既に0.1%取得している創業家とは別に33.3%の株式を入手するためには市場に対してTOBを実施しなければなりません。しかしTOBは出光興産に飲み込まれることを警戒した昭和シェル側が反発した経緯があり、「対等な精神に基づく経営統合」に反するTOBの実施は難しい状況になっています。

第10回本屋大賞を受賞した「海賊とよばれた男」をご存知でしょうか。主人公は出光興産創業者の出光佐三(1981年没)をモデルとしており、その一生と出光興産が大企業にまで成長する過程が描かれている大作です。今年の12月には岡田准一さん主演による映画も上映されるようです。
今回の騒動において、出光創業家の本当の狙いは経済音痴の私には分かりませんが「海賊とよばれた男」を読む限り、もし未だに出光佐三イズムが現出光興産に色濃く受け継がれているのであれば、「両社は企業風土があわない」という言葉は理解できます。多分にフィクションを含むとはいえ、よりよい社会を実現するために規制や既得権益と戦い、犠牲を払いながらその戦いに勝利してきた姿は感動的です。

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