ファルコン9【溝口】

アメリカの宇宙開発企業スペースXは、2016年4月に打ち上げ回収済のロケット本体(一段目)を再利用、再打ち上げすることに初めて成功したそうです。今後、打ち上げコストが大幅に削減されることが期待されています。
これまで軌道投入用ロケットは、本体を使い捨てで運用してきましたが、同社の主力ロケット「ファルコン9」は再利用することが可能で、打ち上げ費用のほとんどを占める本体製造費をカットすることが可能になります。(最大で30%の割引が可能)
ファルコン9は低周回軌道に22,800kgの打ち上げ能力を持つ中型クラスのロケットで、2010年に初めて打ち上げが行われました。民間企業(スペースX社はイーロン・マスクにより2002年に創業)による徹底した低コスト化が図られたロケットであり、打ち上げ価格は66億円(29万円/kg)と、同規模ロケットの100億円と比較して遥かに安価となっています。

一方、日本の「H-2Aロケット」は10,000kgの打ち上げ能力に対して打ち上げ費用は100億円と言われており、打ち上げ1kg当りコストはファルコン9の3.3倍(100万円)に相当します。ファルコン9の18年前に始まったH-2ロケット開発(1984年)ですが、新設会社にコスト、成功率、シェア、アイデアで、あっという間に追い越されてしまったことになります。
遅ればせながらH-2Aロケット開発も、2007年より公共(JAXA)より民間(三菱重工)に移管されました。しかし造船(大型客船)、MRJ(ジェット旅客機)、原発と多くの問題を抱える三菱重工では、世界と戦うには少し荷が重いかもしれませんね。近頃指摘されることが多いエンジニアとホワイトカラーの生産性の低さを強く感じます。

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