100円のトマトに、居酒屋で300円払う理由

前回の会議で勉強した、造園における「アートとサイエンス」について復習します。また一部追加の情報も含まれていますのでスタッフは必ず読むようにしてください。

最初にアートとサイエンスを定義します。アートとは人文科学、サイエンスは自然科学と訳されます。人文と自然の違いを考えてみると、「人の感情」が入っているかいないかの違いだと思われます。誤解を恐れずに言い切れば、アートとは「人の心に影響を与えるもの」であり、サイエンスとは「自然に影響を与えるもの」と言えます。

次にアートについて考えていくために、タイトル戻ります。「100円のトマトに、居酒屋で300円払う理由」です。 スーパーにて100円で売ってあるトマトですが、それを切って器に盛るだけで居酒屋では300円で売ることができます。そこには200円の価格差がありますが、いったいこの差って何なのでしょうか?実際に成立している事象なので、それぞれ売り手と買い手の両面から、200円の価値が見つかるはずです。

売り手側から考えるとトマト代の100円は原価であり、300円は売上となります。そして差の200円は粗利益となります。居酒屋は粗利益を積み上げて、家賃、電気代、人件費などの固定費を支払っています。これが売り手側がトマトを300円で売る理由であり、一般的に価値と信じられているものとなります。

でも、買い手側から考えるとどうなるでしょうか?トマトを食べるだけならスーパーで買ってきたトマトを包丁で切るだけです。これだと原価も価値も100円となり300円という値付けは到底不可能でしょう。ではなぜ、買い手となる居酒屋のお客は、差額の200円を支払って平気なのでしょうか?そこにはスーパーで買ってきたトマトとは、明らかに異なる差があるはずです。

その差とは、きっと「楽しさ」や「嬉しさ」なのだと思います。楽しくトマトを食べられることや、美味しい食事をとれる嬉しさのことです。これが居酒屋のお客が200円余計に支払う理由であり価値となります。大げさかもしれませんが、お客の心を「楽しい」「嬉しい」と動かしたからこそ、差額の200円を得られたのであり、そのような心の動きがないのであれば、原価である100円しか貰えないはずです。

人間は、名画を見て心が震える、映画を見て涙する、美味しいものを食べて幸せになる、というように、心が動くことに対して価値を認め、その原価以上の対価を支払っています。決して売り手側の理由に納得して支払っているのではないことを、よくよく理解しなければなりません。 だからNeatGardenにおいても、原価以上にお客さまから対価を頂くのであれば、お客さまの心を震わすような空間を創り出さなければなりません。お客さまの心が動かない庭は、原価だけの価値しかありません。

ここまでが前回の会議で勉強した内容です。その後「ではもう一方のサイエンスって何だろう?」と考え始めました。まだ確信を得るまで煮詰まっていないのですが、「アートとサイエンス」の理解を助けるため、最終的にたどり着いた考えを記してみます。

サイエンスとは自然科学です。自然に影響を与えることのできる知識です。そして造園では空間を形作るために、多くの植物を利用します。植物は生き物ですから植物生理があります。その植物生理に沿った形で植物を扱わないと、枯れたり傷んだりすることになります。これはサイエンスです。

造園空間においては、その原価の大部分が植物材料によって構成されます。その際にサイエンスを無視した扱いをすると、枯損してしまい原価を損なってしまいます。このことから、サイエンスとは「材料価値を守るもの」と定義することができます。 植物に限らず構造物についても、すぐに壊れてしまうようなものなどは、サイエンスが足りないといえるでしょう。

アートを追及するがうえにサイエンスを無視していると、結果として材料価値を損ない、人の心に影響を与えるアート部分に悪影響を与えることになります。 「アート=粗利」の能力を身に付けるには、相当の時間と経験が必要となりますが、サイエンスについては教科書がありますので、しっかりと勉強をして、まずは「サイエンス=原価」を保つ能力を身に付けることから努力していきましょう。

 

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